うみねこのなく頃に episode U-X 『accept』{あくせぷと}
配役 ♂:4 ♀:5 右代宮戦人{うしろみや ばとら} :男 |
−OP−
SE*紗音が用意した蜘蛛の糸により、嘉音の偽者は消え失せた
源次、紗音、郷田の3人は、嘉音の偽者に襲われて南條と熊沢が
絶命した事を報せに行くが――
<客間>
楼座 :南條先生と熊沢さんが?
一体どういうことなの?
郷田 :そ、それがその…
なんと、説明すれば良いのか…!(怯えたように)
楼座 :犯人を見たの?
見てないの!?
郷田 :上手く説明出来ません…
楼座 :?
郷田 :確かにそれは…
それは私達の目の前で起こりました!
私の目の前に居た…けれど!
あれはなんだったのか!
楼座 :何を言ってるの!?
貴方が出会ったのは所在不明のベアトリーチェか、
行方不明になっている嘉音くんのどちらかしかあり得ないでしょう!(激昂したように)
戦人 :おばさん、少し落ち着けって!
郷田さん、何があったのか…順を追って話してくれないか?
郷田 :それが…どう言えば良いのか…
譲治 :紗音、君も見たのかい?
紗音 :は、はい…
譲治 :何があったの?
紗音 :厨房の…勝手口に来たんです…
楼座 :誰がっ!?
紗音 :っ……(怯えるように)
郷田 :それは、血まみれで大怪我をしていました…!
とても深い傷で――!
楼座 :だからそれは誰の事なのっ!?
郷田 :分からないんです!
あれは一体…なんだったのか!!
楼座 :(舌打ち)
SE*そのまま頭を抱え込み唸る郷田
埒が開かないと感じた楼座は、苛立ちながら源次に問う
楼座 :源次さん、貴方は見たんでしょう?
源次 :はい。
初めは嘉音であると信じました――
楼座 :ほら! やっぱり生きていたでしょう!?
私の推理は正しかった!
譲治 :『初めは』って、どういうこと?
楼座 :……
SE*我が意を得たりと声を上げる楼座だったが、横から口を挟んできた
譲治をキッと見据える
源次 :はい…
その後に起こった事は、口では説明出来ません。
南條先生と熊沢を殺し、そして姿を消しました。
しかし、その時の彼は間違いなく、嘉音ではありませんでした
郷田 :そ、そうなんです!
口ではとても説明出来ない!
譲治 :紗音。
君も同じ意見なのかい?
紗音 :はい。
楼座 :…もういいわ、これ以上聞いても埒{らち}が開かない。
確認しに行きましょう
戦人 :確認って…死体を…!?
楼座 :ええ。
皆で一緒に行動すれば安全よ
<使用人室>
SE*楼座の言葉に従い、全員で南條と熊沢の死体を確認しに来た
郷田が部屋の鍵を取り出す
郷田 :……(楼座に目配せをする)
楼座 :……(首肯)
譲治 :真里亞ちゃんは、僕とここで待っていようね
真里亞:う? うー…(不満そうに)
SE*鍵のロックが外れ、木製のドアが軋んで開く音
【同時】 戦人 :!? 郷田 :!? 楼座 :!? |
紗音 :そんな!?
郷田 :どこへ…!?
SE*戦人達が南條と熊沢が死亡していた部屋に入ったが、
信じがたい事に死体は消失していた
二人が倒れていた床に大量の血痕だけが残されている
楼座 :なんなの…?
源次 :二人の遺体がありません…!
楼座 :どういうこと…!?
戦人 :郷田さん。
部屋に鍵を掛けたんだろう?
郷田 :た、確かに掛けました…
戦人 :ってことは、朱志香の部屋と同じ…
また密室から死体が消えたってことかよ…!
郷田 :…なにがなにやら、もう分からない!
楼座 :ふん…
SE*喚く郷田に冷たい視線を向ける楼座
戦人 :仮に、嘉音くんが犯人だとしても、
嘉音くんはマスターキーを持ってないはず――
楼座 :いいえ。
嘉音くんはマスターキーを手に入れられたわよ。
だって彼のマスターキーは、朱志香ちゃんの遺体のポケットから
見つかった…
そしてその鍵は――!
戦人 :そうだ!
南條先生が、朱志香のポケットから!
郷田 :楼座様、私達は断じて、嘘など吐{つ}いていません!
楼座 :静かに。
死体を隠した本人も、死体はよそに持ち去ったと告白しているわ。
これでね
戦人 :礼拝堂にあったのと、同じ封筒…?
楼座 :ええ。
ここに堂々と置いてあったわ…
読むわよ?
『右代宮家の皆さま、黄金の碑文の謎解きは、いよいよ佳境に
入りましたでしょうか?
皆さんに私を止める事が出来る唯一の方法が、碑文の謎を
解く事なのです。
それ以外のいかなる方法を以{も}ってしても、私と儀式を
止める事は出来ません。
くれぐれも皆さんの目的をお間違いなきよう、よろしくお願い
申し上げます。
私を探そうとも無駄。
私から逃{のが}れようとも無駄。
私を否定しようとも無駄なのです。
黄金のベアトリーチェ』
真里亞:あはっ…
SE*封筒の中の手紙の締めに記された名前を聞くと、
真里亞は嬉しそうに微笑んだ
楼座 :『追伸、二人の遺体を儀式にお借りします。
後{のち}ほどご返却致します。
あとこの鍵は、皆様のものですので、ご返却致します』
SE*楼座が手紙を読み終えると、封筒の中からマスターキーが二つ
出てきた
SE*と、ここで登場人物達は静止し、ゲーム盤の外の戦人とベアトが
現われる
戦人 :ふざけんな! またかよ!?
またマスターキーを持ってる使用人しか疑えないってのかよ!?
ベアト:んっふふふふふふ…
SE*ベアトの不敵な笑いに戦人は一瞬萎縮してしまう
戦人 :っ! そうだ!
この部屋の本来の鍵である、使用人の鍵はどうなってるんだ!?
ベアト:ふっ…真実を告げよう
SE*ベアトの口から赤き真実が紡がれる
ベアト:『使用人室の鍵は全て、使用人室の奥の
キーボックスに収められている』
戦人 :なにっ!?
ベアト:『出入りは唯一の扉と唯一の窓から以外は不可能。
そして、それらはいずれも施錠されている。
扉も窓も施錠時にはいかなる出入りも出来ない』
当然、『扉の解錠は使用人室の鍵とマスターキー以外は不可能』
戦人 :…駄目だ駄目だ!
全然駄目だ!(苦しそうに)
ベアト:妾を認めれば全ての謎に決着がつく…
どのような密室も生み出せるのだからなぁ…
ふふふふふふ…
アッヒャヒャヒャヒャ…!
アッヒャヒャヒャヒャ…!
SE*戦人とベアトが消えた後、再びゲーム盤の登場人物達は動きだす
楼座 :これではっきりしたわ。
もう疑いようもない…
郷田 :…はぁ?
楼座 :もう茶番は飽き飽きしたわ
紗音 :ちゃ、茶番…?
楼座 :死体が見つからない以上、あの二人が殺された事を
認める訳にはいかない
譲治 :それはどういう意味ですか?
楼座 :南條先生と熊沢さんは死んでいない。
殺されたという事にして、この屋敷の何処かに隠れているのよ。
私達を襲う為にね!
譲治 :郷田さん達が、嘘を吐いていると言うんですか!?
郷田 :楼座様!
この郷田――
いえ、右代宮家使用人一同、誓ってそのような事は致しません!
(訴えかけるように)
楼座 :南條先生と熊沢さんの遺体が見つからない限り、
貴方達は狼である事を否定出来ない。
黄金に目が眩{くら}んで、あの魔女に買収されたんでしょう?
そうなんでしょう!?
紗音 ;楼座様!
私達はそんな――
楼座 :それ以上近付かないで。
SE*楼座は使用人達に持っていた銃を突き付ける
楼座 :10年も恩を受けながらそれを仇{あだ}で返すなんて…!
紗音 :そんな…
そんなのって酷すぎます!
譲治 :楼座おばさん! あんまりだ!
彼女達は、正直に話しているだけなのに!
紗音 :…っ…うっ…うぅ…
SE*譲治に庇われ、紗音は顔を覆って涙を流す
そこへ源次が諭すように声を掛けた
源次 :紗音、下がりなさい。
楼座様の言う事はもっともだ。
死体を見つけない限り、私達の言った事は証明出来ない
譲治 :源次さん…
源次 :私は信頼の証として、これを預かっていると信じています。
それを失ったなら、お返しするのは当然かと…
SE*そう言って、源次は自分の所持しているマスターキーを置いた
楼座 :…貴方は本当に使用人の鑑ね。
お父様が心を許すのも良く分かるわ。
そんな貴方まで疑わなくてはならないなんて、本当に心苦しいわ…
源次 :二人とも…
SE*源次は紗音と郷田に目配せをし、同じようにマスターキーを
返却させる
楼座 :真里亞、その手さげを貸しなさい
真里亞:うー…(嫌そうに)
SE*母の言葉に真里亞が渋々従うと、楼座は真里亞の手さげの中に
マスターキーを入れた
譲治 :満足かい? 楼座おばさん
楼座 :ええ…満足よ。
例え全員が信用出来なくても、私は私自身だけを
信用する事が出来る。
これでもう私は誰も疑わずに済む(勝ち誇るように)
真里亞:鍵なんか関係ないよ…
楼座 :!
SE*真里亞の言葉を聞いて楼座は真里亞を睨む
真里亞:ふふっ…ベアトリーチェは魔法で扉を開けられる。
鍵なんて要らない
楼座 :(舌打ち)
アンタ何言って――
戦人 :おっ…!
楼座 :っ…!
SE*真里亞に手を上げようとする楼座
しかし戦人が楼座の腕を掴んでそれを止めた
戦人 :もうよしてくれよ…! 楼座おばさん…!
真里亞が…! 真里亞が全部正しかったんだ…!(低い声で)
楼座 :何を言っているの!?
SE*楼座の言葉を無視して、真里亞の前に出る戦人
真里亞の前で屈み、目線を合わせて肩を掴み、優しく話し掛ける
戦人 :真里亞、疑って悪かった…!
SE*そう言って真里亞を抱き寄せた
真里亞:戦人…
戦人 :全部…
全部魔女の仕業だったんだ…
それを俺は信じなかったから…
こんなにも苦しくて…! 悲しくて…!
真里亞:戦人はベアトリーチェを信じてくれる?
戦人 :ああ… 信じる…!
ベアトリーチェはいるんだ…!
不思議な魔法を使う魔女なんだ…!(涙を流しながら)
SE*悲しむ戦人を、真里亞は抱きしめられたまま、優しく撫でて慰める
真里亞:戦人…
大丈夫、怖くないよ…
真里亞と一緒に、碑文の謎を考えよ?
ベアトは最初から、この問題を解いて遊ぼうとしか、言ってないよ
戦人 :ああ、そうだったんだ。
犯人捜しなんてまったくの無駄だったんだ…!
俺達はただ、魔女を信じれば良かったんだ…!
SE*泣き止み、真里亞から身体を離した戦人
戦人 :っ…
真里亞:ふふっ…
SE*真里亞は戦人の頬を撫で、その反対側の頬に口づけをし、
そして柔らかく微笑んだ
―――――――――――――――
SE*屋敷の外は変わらず悪天候のままだ
屋敷の中では風と雨が窓を叩く音が静かに響く
源次 :楼座様。
客間へは以後、お許しがない限りお許しがない限り立入りません。
内側より、施錠されてください
楼座 :本当に殊勝{しゅしょう}な人達ね…
台風が去って、この島に再びうみねこの鳴き声が戻って来たなら…
私達は再び、互いを信頼し合えるのかしら…
源次 :もし、信頼を賜{たま}えるのでしたら、これに勝る喜びはありません
SE*源次の言葉に楼座は優しく微笑んだ
楼座 :そうね。
私達は必ず解り合えるわ
源次 :私{わたくし}どもは厨房へ戻ります。
何か御座いましたら、いつでも御用命ください
楼座 :ありがとう。
もし貴方が羊だったなら、貴方を狼の檻{おり}に放り出す事に
なってしまうわね…
ごめんなさい…
源次 :家具は家に運命を委{ゆだ}ねます。
命を落とす事になろうとも、それによって楼座様の信頼を
再び勝ち取れるなら、それは光栄な事です
楼座 :台風が過ぎ去ったら、私達は再び手を取り合えるに違いない
源次 :うみねこの鳴く頃に…
楼座 :ん…(首肯)
郷田 :温かい食事をお望みでしたら、いつでもこの郷田、最高の料理を
御用意させて頂きます…!
楼座 :ありがとう。
貴方には明日の朝食を頼みたいわ
郷田 :畏{かしこ}まりました
楼座 :紗音ちゃんも。
さっきは酷い事を言ってごめんなさいね。
明日の朝に、美味しい紅茶を飲みながら仲直りをしましょう?
紗音 :はい、ありがとうございます
譲治 :僕も、彼らと一緒に行くよ
紗音 :譲治様…!?
譲治 :僕は僕の判断で行動します
紗音 :……(微笑む)
SE*全員が部屋から出た後、楼座が使用人室に鍵を閉める
使用人達は一礼をし、譲治とともに楼座たちと別れた
使用人達と譲治が廊下を角に曲がり、見えなくなってから――
楼座 :ふん…
信用出来ないわよ、家具どもめ…!
戦人 :えっ…?
楼座 :マスターキーは全部で五つ?
どうせ複製の鍵があるに決まってるわ。
信用なんか出来るものか!
戦人 :そ、そりゃあねえぜ!
真里亞:う? うぅー…!
戦人 :彼らの今日までの苦労を…! 全て台無しにして踏み付けて!
鍵まで手放させて! まだ信用出来ないってのかよ!?
あんまりだぜそんなのってぇぇぇ!!
SE*戦人は楼座の使用人達へのあまりの仕打ちに糾弾するが、
楼座はそれを無視して真里亞の手を取り廊下を歩きだした
戦人 :くっ…!
ううあああああああああああああああああああっ!!
SE*やりきれない思いを戦人が叫んだところで、再びゲーム盤の外の
ベアトと戦人が現われゲーム盤の時間が止まる
戦人 :もうやめてくれ!
ベアトリーチェ! 頼むからここに現われて、「マスターキーは
それで全部だから、皆を疑わなくて良いんだ」って教えてやってくれ!
ベアト:妾の家具になると心から誓えるかぁ?
戦人 :っ!?
SE*ベアトは戦人に見せつけるように赤き真実を紡ぐ
ベアト:そうしたら、『マスターキーは5本しかない』…
と楼座に言ってやるよ…
戦人 :くっ…! ぐぅぅぅ…!
ベアト:ヒッハハハハハハハハハ…!
ヒャハハハハハハハハハ!
アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!
SE*ベアトの意地の悪い笑いが昂るのとリンクするように雷が落ちた
<厨房>
SE*一方、厨房では使用人達が改めて譲治に、南條と熊沢が殺害された際に
何が起こったのかを話していた
譲治 :信じられない…!
それが真相だと言うのか!?
紗音 :はい…
郷田 :私は取っ組み合いまでしたんです。
あれが幻だったとは思えません!
譲治 :紗音は、嘉音君が偽者かもしれないと思った時、蜘蛛{くも}の巣を
取って来たと言っていたね。
どうして、そんな事を?
紗音 :大昔の六軒島には、悪霊が棲{す}んでいて…
蜘蛛の巣を魔除けと尊んで大切にしていたという話を
聞いた事があり…
それで、咄嗟{とっさ}に…
譲治 :蜘蛛は益虫{えきちゅう}だからね。
そういう話があっても、おかしくはない…
紗音 :きっと、その悪霊の力を…
あの鳥居が封じ込めていたんだと思います…
その霊鏡を、私が…割ってしまったから…!
くっ…ぅ……(泣きだす)
譲治 :…っ(紗音を泣き止まそうと別の話を振る)
紗音、君に囁{ささや}いたという魔女は、
その鏡によって力を失うと言ってなかったっけ?
紗音 :はい…
あの鏡があると、力が出せないと…(涙声)
譲治 :そうか…
紗音 :そういえば、鳥居にあった物とは違うでしょうが、
奥様がお守りとして、霊鏡をお持ちになっていました
譲治 :夏妃おばさんが…?
紗音 :とても強い魔除けの力を持つ霊鏡だとか…
源次 :夏妃様の御実家は、代々伝わる神官の御家でした
譲治 :その霊鏡があれば、魔女のベアトリーチェに対抗出来るかも…
紗音 :奥様は宝物箱に入れて大事に仕舞われてました
譲治 :行こう! 夏妃おばさんの部屋へ!
その鏡を取りに!
紗音 :で、でも、奥様の部屋には鍵が掛かっています…!
譲治 :鍵は、夏妃おばさんが持ち歩いてるはずだろ?
礼拝堂には、まだ夏妃おばさんの遺体がある。
行こう!
源次 :私は御一緒出来ません
【同時】 譲治 :え? 紗音 :え? |
源次 :私は行けぬ。
御館様から、いつ御呼出しがあっても良いように、
私はここに居なくてはならぬ
紗音 :源次様…
源次O:全ては運命に任せようと思います
SE*厨房の裏口から、譲治、紗音、郷田の3人は礼拝堂まで雨の中を
走って行った
裏口のドアが閉められると同時に、
3人を見送る源次の背後で物音が鳴る
源次 :ぬっ…!
SE*物音に反応した源次は即座にナイフを投げた
ナイフは黄金の蝶を消滅させ壁に刺さる
源次 :……
<客間>
SE*客間の入り口にはソファー等によってバリケードが張られている
楼座は銃を構えて警戒し、戦人と真里亞は黄金の碑文を解こうとしている
戦人 :なあ、真里亞…
真里亞:うー?
戦人 :ベアトリーチェは、これを解いたらどうするって言ってたっけ?
真里亞:うー!(嬉しそうに)
この碑文を解いたら、ベアトの儀式は、おしまいになる。
そしたらもう誰も死なない
戦人 :ホントにか?
そういうルールを奴が提示してるだけだろ?
奴は、じい様の隠し黄金を狙ってるんじゃないのか?
真里亞:うー…!(不満そうに)
黄金は最初からベアトの物だよ!
戦人 :…んじゃ、どうしてベアトは俺達にこんなゲームじみた事を
仕掛けてきたんだ?
真里亞:魔法にはリスクが必要なの
戦人 :リスク?
真里亞:どんな魔法にも、絶対にリスクや弱点があるの。
んーん、ないといけないの
戦人 :ってことは、ギャンブルと同じ…
でかく失う覚悟がなきゃ、でかくは勝てない…
真里亞:(微笑む)
戦人 :そして勝ち目の薄いギャンブルであればあるほど、
配当はでかくなる…
真里亞:うん、うん(嬉しそうに)
その通りだよー
だからこの謎を解けば、ちゃんと儀式は中断される。
だってそれを約束違反したら、リスクにならない
戦人 :…これを解けば、奴は約束を守る…
<礼拝堂>
SE*台風の中、譲治達はなんとか礼拝堂まで辿り着いた
譲治 :何度見ても辛いな…
郷田 :紗音さん、鍵を頼みます。
お亡くなりになられたとはいえ、奥様はレディーです。
私には触れる事が出来ません…
紗音 :はい…
SE*郷田の言葉に頷き、紗音は夏妃の遺体に近付く
紗音 :奥様、失礼致します
SE*そして夏妃の遺体を探る
紗音 :あっ… ありました…!
奥様の部屋の鍵です!
【同時】 郷田 :うっ…! 譲治 :あっ…!(二人同時、驚きの声) |
紗音 :っ…!(二人より少し遅れて同じく驚く)
SE*3人の視線の先には黄金の蝶が群れを成して飛んでいる
紗音 :そ、そんな…!
譲治 :な、なんだこれは!?
これが君達の言っていた、黄金の蝶なのか!?
紗音 :うっ…うあ…!
SE*黄金の蝶の群れが紗音に群がり襲いかかった
郷田 :あ…ああ…
譲治 :紗音!
SE*譲治はすぐさま紗音の手を取り助け出す
紗音 :うっ…ああああ…!
譲治 :早く外へ!
郷田 :あ、あああ…!
SE*譲治は紗音の手を取ったまま礼拝堂の外へ駆け出し、
郷田も少し反応が遅れながらも同じく駆け出した
【同時】 譲治 :…っ…はっ…はっ…っ…!(走る時の呼吸) 紗音 :…はっ…はっ…きゃあ…!(紗音は悲鳴混じりに) |
譲治 :…ぐっ…ぬっ…! 開かない…! 堅い…!
SE*礼拝堂の扉まで到達するものの、鍵は閉まっており、
サムターンを回し開けようにも堅く動かない
紗音 :はっ…!
郷田 :譲治様…! 早く…!
くそぉ! な、なめるなぁ…!(怯えながら奮闘)
SE*紗音は心配そうに譲治と郷田に視線を巡らせ、
郷田は上着を脱いで振ることで蝶を散らし、蝶の侵攻を防いでいる
郷田 :あっ…! え、ええええ!?
SE*蝶に対抗しながらふと郷田が視線を上に向けると、
無数に飛び交う蝶の向こうにはベアトが姿を現し、
宙に浮いていた
ベアト:ふっ…
紗音 :っ…!
郷田 :べ、ベアトリーチェ…!?
譲治 :っ!?
SE*郷田の声に、譲治と紗音もベアトの存在に気付く
ベアト:ふふふふふ…!
おあつらえ向きに3人ではないか?
これは実に好都合…
郷田 :ひっ、ひいいいぃいぃいぃぃぃ…!
譲治 :こ、これが…
紗音 :ベアトリーチェ…様…?
ベアト:逃げなくて良いのかぁ?
ここが其方{そなた}らの墓場に相応しいと言うなら
それも良いがなぁ…
SE*ベアトの言葉にハッとして譲治は鍵を開けようとする
譲治 :くっ… くうぅっ…!
SE*鍵が外れドアが開く
譲治 :開いた!
SE*扉が開くと同時に譲治達は一目散に逃げ出した
ベアト:くっ…ふふふふふ…! 愉快愉快…!
そうでなくては面白くない
<右代宮家屋敷>
【同時】 郷田:はぁ…はぁ…はぁ…はぁ… 譲治:はっ…はっ…はっ…はっ… 紗音:はぁ…はっ…はっ…はっ… |
SE*屋敷まで逃げられた3人は夏妃の部屋を目指して階段を駆け上がり
廊下を走る
SE*鍵の開く音
紗音:開きました!
【同時】 紗音:はぁ…はっ… 郷田:はぁぁー…はぁ… |
SE*夏妃の部屋に到着し、ようやく息を整える事が出来た3人
郷田が部屋の電気を点ける
譲治 :どこにあるんだ…?
紗音 :たぶん、御化粧台か、ベッドの脇にあるんじゃないかと思います
譲治 :夏妃おばさん、ごめん!
SE*亡くなった叔母に謝りながら、一刻も早く霊鏡を見つけ出そうと
部屋の探索を始める
紗音 :あっ…!
この箱かもしれません!
SE*譲治が化粧台の引き出しを開けていくと、
紗音がそれらしい箱を見つけた
紗音 :んっ…んっ…!
鍵が掛かってて開きません…
譲治:…やむを得ない。 壊そう…!
SE*仕方なく同じく化粧台に仕舞ってあったペーパーナイフで宝石箱を
抉じ開けようとするが――
ベアトO:ふふふふふふふ…ふふふふふふふ…!
紗音 :はっ…! 扉が…!
郷田 :っ…はっ…はっ…!
SE*ベアトの笑い声が聞こえてきたので慌てて扉を閉めに掛かる郷田
郷田 :っ…!?
SE*扉を閉めようと廊下を覗くと廊下の角からベアトの下僕の山羊達が
ぞろぞろと夏妃の部屋へと歩いてきた
郷田 :ええっ…!?
な、なんだありゃ!?
SE*扉を閉める
郷田 :じょ、譲治様っ! 急いで!!
譲治 :っ…もう少しっ!
郷田 :くぅっ…ぐぅぅぅぅ…!
SE*時間を稼ぐためにサムターンを回し鍵を閉める郷田
しかし、サムターンはすぐに元の状態に戻り一向に鍵は掛からない
郷田 :な、なんだ?
ぬ、ぬうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
し、閉まらないぃ!!
どうなってんだ、こりゃ!?
くそ!くそ!くそぉ!!
ベアトO:ひっへへへへへ…!
鍵が妾を拒むと思うかぁ?
その部屋の新しき主を、その部屋の扉が拒むと思うのか?
ふっははははは…
SE*鍵が閉まらないので扉を抑える郷田
部屋の外から扉が叩かれる
郷田 :譲治様っ!早くぅ…!!
ぬうぅ…!!
づ、づぅ…ぬわぁぁぁぁぁっ…!!
譲治 :くっ…っ…!
郷田 :早くぅぅっ…!
SE*扉を叩く音がどんどん激しくなり、もう破られるかと思ったところで
扉を叩く音が止んだ
郷田 :…あれ?
SE*だが代わりに扉からか細い女性の腕が生えてきて、
郷田の頭を撫でまわした
郷田 :ひっ! ひぃぃぃぃぃぃ…!
ひや…はや…わぁぁぁっ…!
紗音 :郷田さんっ!?
譲治 :待って! もう少しで!
郷田 :はぁぁぁぁ…! あがぁ…!
ぐぐぐぐ…!
SE*扉から生えたか細い腕は、郷田の上着の襟を掴むと、その見た目と
反比例するような力強さで郷田の巨体を持ち上げた
腕の持ち主の少女が可愛らしい声で喋る
ベルゼ:うふふふふっ! 可愛い〜!
ね〜えっ? 見てるのぉ? 走馬灯ぉ?
でももう…おしまい…!(「おしまい」で声を低くする)
SE*少女の腕が郷田を離すと、扉をすり抜けて杭が郷田の心臓を貫いた
紗音 :きゃあっ!
譲治 :ご、郷田さん!!
SE*扉は新たな主を迎える為にすんなりと開き、山羊達が黄金の蝶と共に
ぞろぞろと侵入してくる
紗音 :っ…!
譲治 :くっ…!
ベアトO:ふっふふふふ…
クゥフフフフフフ…!
ふふ…うふふ…
SE*黄金の光と共にベアトが再び姿を現わす
ベアト:んふひひひひひひ…!
ふふふふふふ…
ヒャアッハッハッハッハッハッハ!!
SE*魔女は儀式に必要な生贄をとうとう追い詰め、哄笑を上げるのだった
―ED―
うみねこのなく頃に episode U-X 『accept』 完