うみねこのなく頃に episodeT‐X 『fool's mate』{フールズメイト}

 配役 ♂:4  ♀:6 

右代宮夏妃 :女
右代宮朱志香 :女 
右代宮譲治 :男
右代宮戦人 :男
右代宮真里亞 :女
紗音 :女
嘉音 :男
ベアトリーチェ :女
ベルンカステル :女
釣り人 :男

 
         

         OP・EDのご用意があれば是非・・・(推奨)


                     -OP-

 <客間>

SE*使用人3人の無残が遺体が転がっている。

 戦人M:第6の晩に、腹を抉りて殺せ。

SE*呂ノ上は腹に杭が。

 戦人M:第7の晩に、膝を抉りて殺せ。

SE*南條には膝に杭が。

 戦人M:第8の晩に、足を抉りて殺せ…。

SE*熊沢には足に杭が。

SE*奥に真里亞が歌っている。

 戦人 :っ!?

 朱志香:真里亞…。

SE*戦人が駆け寄る。

 戦人 :真里亞っ!(走)
     歌うのをやめろっ!

 真里亞:うー…。
     うぅー…。

 戦人 :どういうことなんだっ
     誰がやったっ

 真里亞:うー…。
     ベアトリーチェ。

 戦人 :ぃ……。
     いい加減にしろォ!!!(鉄パイプを投げる)

 譲治 :戦人くん…。
     …真里亞ちゃん、今度こそ君は、
     3人を殺す犯人の顔を見たはずだよ。
     犯人は誰なんだい?

 真里亞:うー。
     ベアトリーチェ。

 譲治 :やっぱり、19人目はいるんだ…。
     ベアトリーチェは存在するんだ…。

 戦人 :っっ!! 
     奴は、源次さんたちをどうやって殺したんだっ。

 真里亞:知らない。

 戦人 :知らねぇってことはねぇだろっ!!
     この部屋での出来事だぞっ!

 譲治 :戦人くんっ。
     …真里亞ちゃん。
     真里亞ちゃんは、どうして壁を向いてお歌を歌っていたのかな。

 真里亞:うー。
     ベアトリーチェが壁を向いてお歌を歌いなさいって言ったから…。

 戦人 :っ!?

 譲治 :じゃぁ、ベアトリーチェがここへやって来たんだね。
     その時、まだ源次さんたちは生きていたんだよね…?
     部屋の鍵は…?
 
 真里亞:うー…。
     鍵はちゃんと、源次さんが掛けたよ。
     
 朱志香:たしかに、鍵は掛かってた…。

 戦人 :じゃぁ、
     ベアトリーチェはどうやって客間に入って来たんだよ!?

 真里亞:うー♪ 
     ベアトリーチェは魔女だから鍵なんて関係ない♪
     蝶々になって扉の隙間から通り抜けてきたんだよ♪

 戦人 :そんなわけ…
     ねぇだろっ!!

 真里亞:きひひひひひひひひ。
     信じられないよね?
     でもベアトリーチェは魔女なのっ。
     不思議な魔法でなんでもできるのっ。
     鍵なんて全然関係ないんだよ。
     きっひひひひひ。
     …ベアトリーチェは言ったよ?
     お爺様の書斎は強力な力で守られていて、
     どうしても入れない…。
     だからあと3人の生贄はこの客間の中から選ぶって…。

 戦人 :っ………。

 真里亞:でもね、ベアトリーチェが言ってくれたの。
     真里亞はいいよ♪って。
     …それはね、戦人がくれた、サソリのお守りがあったからだよ。
     だからベアトリーチェは真里亞にだけ、なにもできなかった。
     そしてね、言ったの。
     壁に向かって、お歌を歌いなさい。
     そしたら何が起こっても、何が聞こえてもわからない。
     さぁお歌をたくさん聴かせておくれって。
     …だから真里亞は、ずっとお歌を歌ってた。
     なにもわからない。

 戦人 :っ!!
     それを信じろってのかよっ!!

 真里亞:きっひひひひひ。
     これで第8の晩は終わったよ。
     ベアトリーチェは蘇る!
     
 戦人 :ふざけんな!
     なにが蘇るだっ!
     魔女なんているもんかっ。
     ベアトリーチェなんていねぇ…!

 譲治 :やめるんだ、戦人くん。

 戦人 :っ………。(睨)

 朱志香:あれ… 母さん?
     …母さんがいない!

 戦人 :えっ。

 真里亞:さっき手紙を読みながら1人で出て行ったよ。

 戦人 :手紙…。

 朱志香:母さんっ!

SE*扉を開けようとするが開かない。

 朱志香:お母さんっ! くっくっ。
     なにこれっ 開かないっっ
     母さんっ! 母さんっ!!

 
 <客間の外>

SE*ベアトリーチェの肖像画の前に立つ夏妃。

 夏妃 :…右代宮家代表、右代宮夏妃です。
     姿を見せなさい。
     黄金の魔女、ベアトリーチェッ!

SE*蝶が舞う。

 夏妃 :ようやく… 姿を現しましたね…。
     さぁ、決着をつけましょう。
     ベアトリーチェッ!

SE*弾丸を放つ。

 戦人 :えいッ!

SE*戦人たちが扉をぶち破った直後、夏妃が倒れる。

 朱志香:母さん……。
     母さんッ!! お母さんッ!!(悲鳴)

 戦人 :朱志香!

SE*真里亞が不気味に笑う。

 真里亞:きひひ…。

 朱志香:母さん…。(抱きかかえ)

SE*夏妃は頭部を撃たれている。

 朱志香:………っ。
     母さん……。母さん……。
     うわああぁぁぁ!!

 戦人 :まさか自分で…。
     わ、わけがわからねぇ…。

 譲治 :…て、手紙がない…。
     叔母さんは何を読んで、どうしてここに誘い出されたんだ…。

SE*肖像画の前に立つ真里亞。

 真里亞:第9の晩に魔女は蘇る…。
     誰も生き残れはしない…。
     そして第10の晩に旅は終わる…。
     黄金の郷に至るだろう…。
     …これで全部終わったね、ベアトリーチェ。
     おめでとう…おめでとう!

 戦人 :っ!?

 真里亞:だから真里亞を導いて♪
     あなたの話してくれた黄金郷へ。
     今こそっ。

 戦人 :いい加減にしやがれ!
     なにがおめでたいっ!
     14人も死んで、残りは俺たち4人だけなんだぞ!
     
SE*夏妃のショットガンを持つ戦人。

 戦人 :俺は絶対に死なねぇ!(震)
     …夜が明けて、台風が過ぎ去って、
     また船着き場にうみねこたちが帰ってくるまで、
     …俺は絶対死なねぇっっ!!!

 真里亞:きひひひひひひひひ。
     よしなよ戦人。
     ベアトリーチェに銃なんて意味ないよ。
     それにもうお終いなんだよ。
     もう旅は終わったんだよ…。
     ほら、時計を見てごらん?

 譲治 :っ!? 時計…?

 真里亞:旅は終わり… 魔女は蘇る…。
     
SE*午前0時の鐘が鳴る。

 真里亞:そして誰も生き残れはしない…。
     
SE*あたりに蝶たちが舞ってくる。

 真里亞:ベアトリーチェ♪ あは♪
     
 朱志香:お…黄金の蝶…。
 
 譲治 :っ……。

 真里亞:…魔女は賢者を称え、4つの宝を授けるだろう。
     1つは黄金郷のすべての黄金…。
     1つはすべての死者の魂を蘇らせ…。
     1つは失った愛すらも蘇らせる…。
     1つは魔女を永遠に眠りにつかせよう…。

 戦人 :…くっ!!
     …魔女なんてっ…!!
     魔女なんて、いねぇっ!!

SE*蝶に向かって撃つ戦人。

 戦人 :へへ…。
     …うっ!?

SE*蝶は増えていく。

 譲治 :これは…。

 朱志香:いったい…。

 戦人 :正体を見せやがれっ!
     
 真里亞:…ベアトリーチェに鉛玉なんて、意味ないってば。
     きっひひひ。

 戦人 :っ……。

 真里亞:きひひひひひひひひ。

 戦人 :こんな…。
     こんな滅茶苦茶あってたまるもんかァァァ!!!
     …認めねぇ…。
     俺はっっ
     魔女なんか認めねぇ!!

 ベアト:ふふふふふふ。
     あははははは。

 
 <とある船着き場>
 
SE*釣り人がボトルメールを見つける。

 釣り人:ん……?(拾う)

 真里亞M:これをあなたが読んだなら、
      そのとき私は死んでいるでしょう。  
      死体があるかないかの違いはあるでしょうが。 
      これを読んだあなた、どうか真相を暴いてください。
      それだけが、私の望みです。
      右代宮真里亞。

 
  *今日でも*
  
  *六軒島 魔女連続殺人の真相は*

    *暴かれていない*


 <お疲れ様会>

 戦人 :ふぅ〜… まいったなぁ…。
     わけがわかんないうちに終わっちまったぜ…。

 朱志香:つまりなんだぁ…。
     犯人は暴けず、時間切れのバッドエンドでした〜ってことなのか?

 真里亞:うー♪
     きっとバッドエンド♪

 譲治 :そうだねぇ。
     1日目の夜に、真里亞ちゃんが読んだベアトリーチェの手紙に、
     碑文の謎を解いてみろとちゃんと予告していたのに、
     僕たちは自衛や犯人を探るのに忙しくて、全然その謎に挑まなかったし…。

 紗音 :そうですね…。
     ちゃんと碑文の謎に挑んでいたら、違う結末もあったのでしょうが…。

 朱志香:紗音もひでぇ目にあったよなぁ。
     顔面を半分砕かれたんだっけ…?
  
 紗音 :そういうお役目でしたから…。
     その… 仕方ありません…。

 嘉音 :皆様も、相当悲惨な最期を遂げられたようですね。

 譲治 :ははは…。
     どうも、そう見たいだねぇ。

 戦人 :俺は、嘉音くんの最期が1番かっこ良かったと思うぜぇ。
     返り討ちとはいえ、犯人と一騎打ちだろ?

 嘉音 :結局歯が立ちませんでしたが…。

 紗音 :でも、嘉音くんの死は大きなヒントになったと思うなぁ。

 譲治 :そうだねぇ、 
     あの時点では全員の所在が明らかだった。
     だから、嘉音くんを殺せるのは、未知の19人目しかありえない…。

 真里亞:うー!
     真里亞は最初から、ベアトリーチェだって、ずぅーっと言ってるっ。
     うーっ。

 朱志香:信じたくはねぇけど、
     ベアトリーチェと名乗る、人間では考えらない力を持った魔女が、
     犯人ってことになるんだろうぜ。

 戦人 :っ……。

 紗音 :そうですよね…。
     人にはできない不思議なことがいっぱいありましたし…。

 嘉音 :たしかに…。
     ベアトリーチェ様はいらっしゃいましたね。

 戦人 :あァ……?

 譲治 :どれもすべて、人間には不可能な犯罪だった。
     魔法の力を使いこなす魔女、ベアトリーチェにしか成しえない犯行だよ。

 朱志香:犯人は魔女だった…。
     その一点において、何の曇りもねぇぜ。
     ベアトリーチェ様万歳ってわけだ。
     ははは、ははは。

 戦人 :………。

 真里亞:うー♪
     みんな信じた♪ 真里亞は嬉しい♪
     うー♪♪

 戦人 :ちょいっと待てよ。
     さっきから聞いてりゃ、なにを思考停止してんだ?
     なんで魔女の仕業ってとこに落ち着いてんだよっ。
     そんなのあるわけねぇだろ!?

 譲治 :だって… 
     明らかに人間には無理な事件だったじゃないか…。

 朱志香:そうだぜ。
      
 嘉音 :戦人さまのおっしゃることが、
     僕にはわかりません。

 戦人 :お前たちこそ、何を口々に言い出すのかさっぱりだぜ!
     …犯人のトリックは、まだ説明できないが…。
     人間の仕業だって断言できるっ!

 譲治 :それはひどい暴論じゃないかい?
     説明できないのに、人間に可能だと断言できるなんて、滅茶苦茶だよ。
 
 戦人 :できないことは魔女が犯人ってことで落ち着くほうが、
     よっぽど滅茶苦茶だぜ!

 真里亞:戦人はなにも説明してない。
     真里亞たちは、人間の仕業だということを説明できない…。
     だから人間じゃない存在が犯人…。
     それが魔女だと、そう言ってるのに…。

 戦人 :きッ!

 真里亞:戦人は、犯人は19人目の魔女じゃなくて、
     18人の中にいると思ってるの…?

 戦人 :そういうわけじゃ…。
     身内に、殺人犯がいるなんて思いたくない…。
     …ただ、だからといって、安易に19人目の肯定はできねぇ!
  
 真里亞:意味わかんないよ…。
     戦人はなにがしたいの…?
 
 戦人 :……矛盾してるかもしれないが…。
     俺はっ あれだけ大勢を殺した憎い犯人を見つけ出したいんだっ!
     どうしても許せねぇんだッ。
     …兄貴だって、両親の仇を見つけたいだろっ。
     朱志香だって、嘉音くんの仇をっ。
     嘉音くんだって、紗音ちゃんの仇を見つけたいだろっ。
     紗音ちゃんだって、自分を殺したのが誰なのか、知りたいはずだ。  
     魔女だの魔法だのってのは思考の放棄だ!
     兄貴たちはわからねぇ事件に屈服して、降参しただけなんだっ!
     そんなの犯人の思うツボじゃないかっ!

 真里亞:きひひひひひ。
     戦人だけはどうしても信じないね…。
     戦人が信じれば奇跡が… 魔法が完成するのに…。

 戦人 :あァ…? 
     全員が認めた嘘は真実になる…。
     そういうことか…?
     生憎だな、全然駄目だぜっ!
     魔女なんていねぇ!

 真里亞:どうして…?

 戦人 :悪いが、最後の最後でもう一回、チェス盤をひっくり返させてもらうぜ。
     つまり、俺に魔女の存在を認めさせたいなら、一番簡単な方法がある。
     みんなが言うところの魔女を…。
     ベアトリーチェ様をここに連れてくりゃいいじゃねぇか。

 紗音 :そんな…!

 嘉音 :無茶苦茶だっ!

 戦人 :何が無茶苦茶だよ。  
     いるんだろ…? 魔女様は…。

 真里亞:うー!(怒)

 戦人 :へへへへへ。

SE*天候が変わり、不気味な笑い声が聞こえてくる。

 ベアト:ふふふふふふ…。
   
SE*ベアトリーチェが現れる。

 戦人 :っ!?
     うわぁっ!

 ベアト:くふふふふ♪
     久しぶりに愉快な人間に出会えたものよ。

 戦人: お…
     お前は… 誰だ…?

 ベアト:招かれた茶会のホストも知らぬのか…?
     
 戦人 :茶会…?

 ベアト:ふふふふ。

 嘉音 :こちらのお方は、千年を生きる黄金の魔女、
     ベアトリーチェさまにあらせられます。

 紗音 :ご機嫌麗しゅう、ベアトリーチェさま…。

 戦人 :ベ… ベアトリーチェ…!?

 譲治 :戦人くんの暴言を、どうかお許しください…!

 朱志香:こ、こいつはその…。
     頑固で、まだ、自分の置かれた状況がわかってなくて…!

 ベアト:ふっふふふふ。
     よいよい、千年も生きると大抵の魔女は生き飽きる。
     そなたのような気骨ある男も時には良い…。

 真里亞:ベアトリーチェが姿を現してくれるのは、
     とても光栄なことだよ… 戦人。

 戦人 :へっへへ。
     こりゃァたまげたぜ…。
     そこまでして俺に魔女が…。
     19人目が犯人だと思い込ませてぇのかよ…。
     ますます気に入った…! くッ
     だが全然駄目だぜ!
     お前はっ! 真里亞たちが主張するベアトリーチェの幻影だ!
     そして、全員がその存在を信じることで、
     ようやく存在を許される、
     そういう虚構の存在なんだろ!
     だから俺にも信じさせたいっ 
     俺だけが信じないから存在できないっ
     そうなんだろっ!?
 
 ベアト:……魔に通じぬ凡夫{ぼんぷ}の分際にしては、
     理解力は悪くない。
     なるほど…。
     どうやらそなたは生まれながらにして、
     魔力に強い抵抗力を持つらしいな…。
     我ら魔女の天敵よ…。
     どう逆さに振るってみせようとも、
     決して我らを信じない…。

 戦人 :にっひひひ…。
     わざわざお姿まで現してもらって恐縮だが、
     俺はお前さんの存在なんて、これっぽっちも信じないぜっ。

 ベアト:ますます気に入ったぞ。
     お前は屈服させがいがある。 
     お前のような男にこそ、我が名を讃えさせ、
     爪先にキスをさせてみたいものよ。

 戦人 :俺は魔女を否定するために、
     全ての出来事を人間のトリックで証明してやるぜ。
     真犯人さんよ!
     そこには一片たりとも、
     魔女も魔法も入り込む余地はねぇってことを
     思い知らせてやるよっ!

 ベアト:よくぞ言ったぞ戦人とやら。
     …ならば聞こう。
     真里亞への手紙は…?
     レシートの封印は?
     チェーンの密室は…?
     源次たちの客間は…?
     夏妃の自殺は…?
     
 戦人 :っ…。

 ベアト:そして…。
     この者たちの運命は!?

SE*あたりが苦しみだす。

 紗音 :っ!? うっうぅ!

 嘉音 :うおァ…!?

SE*紗音と嘉音が砕け散る。

 紗音 :ひゃぁッ!!

 嘉音 :うぅッ!!

 戦人 :っ…!?

 譲治 :…戦人くん…。
     君が信じないから…。
     魔法が解けてしまう…。

SE*譲治と朱志香も砕け散る。

 真里亞:きひひひひ。
     戦人がベアトリーチェを信じないから…。
     解けてしまう…。

SE*真里亞も砕け散る。

 戦人 :くッ…。
     こんなもんは…。
     こんなもんは信じねぇッ!!
     これもトリックに決まってるッ!
     そのトリックを俺が全部暴いてやるぜ!
     
 ベアト:…面白い。
     人間の力、見せてもらおうではないか。
     
 戦人 :あぁ!
     全部説明してやるよ!
     そして何がなんでも貴様を否定してやる!
     どんな不可解だろうと、全部人間で説明してやるっ!

 ベアト:………。(にやり)

 戦人 :ぜってぇてめぇをこの世から消し去ってやるよっ!!

SE*戦人とベアトが睨みあう。

 
 <メタ世界>

 ベルン:………。(飲む)
     梅干し紅茶、1個200円のやつよ…。
     あなたも飲む…?
 
 ベアト:伝説の魔女、ベルンカステル卿が何用かな…?

 ベルン:私は単なる旅の魔女…。
     あなたの領地を犯しにきたつもりはないわ。
     
 ベアト:ほぉ…。

 ベルン:…それに私は、
     1人を無限に殺す、恐ろしい力を持つ魔女には、まったく無力…。
     …安心して。

 ベアト:その無力な魔女殿が、
     1人を必ず殺す力を持つ残忍で恐ろしいかの大魔女、
     ラムダデルタ卿を退け{しりぞけ}られたのだからな…。

 ベルン:根競べに勝っただけよ…。
     あの娘が飽きただけでしょう…?
     
 ベアト:…しかし、そなたは0でない限り、必ず奇跡を起こす力を持つ…。
     どちらの力が真に恐ろしいやら…。ふふふふ。

 ベルン:私はカケラを渡り、退屈から逃れ続ける逃亡の旅人…。
     あなたが面白そうなことを始めたと聞いたからやってきただけのこと。
     面白くなくなったら、勝手に出ていくからご心配なく。

 ベアト:大ベルンカステル卿にご高覧{こうらん}いただけ、このベアトリーチェ、
     恐悦至極に存じるぞ。
     …してのご感想は…?

 ベルン:あなたは一見、慈しみ{いつくしみ}があるけれど、
     まったく理解できない…。
     だから恐ろしいの…。
 
 ベアト:ふふふ…。
     やはり紅茶を飲むなら魔女とに限る。
     退屈しない。

 ベルン:退屈は魔女を殺す唯一の毒なの…。
     だから私を殺さないでね…?
     無限の魔女、ベアトリーチェ卿。

 ベアト:それがお望みならこのベアトリーチェ、
     更に楽しませてご覧にいれよう。
     しばし待たれよ…。
     ふふふふ…。ふっはははは。(消)

 ベルン:……あなたもやっかいなのに好かれたようね…。
     でも、さすがに気の毒だから、少しだけ力を貸してあげる…。
     …だからといって勘違いしないで。
     私はあなたの味方のつもりはないわ…。
     私は、ベアトがこれから紡ぐ無限の物語を、
     飽きるまで楽しむつもり。
     だからあなたに力を貸すの…。
     …私が、飽きないために。
     私は世界で一番残酷な魔女…。
     どんな相手でも絶対に屈服させる…。
     たとえ相手が、無限の魔女ベアトリーチェであってもね…。
     だからあなたも、せいぜい頑張るのよ。
     私を退屈させないでね…。
     フフフフフ。
     …フフフフフ。

  
  −ED−

次回予告


うみねこのなく頃に episode T-X 完


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