うみねこのなく頃に episodeT‐W 『blunder』{ブランダー}
配役 ♂:5 ♀:4 右代宮夏妃 :女 |
−OP−
<個室>
SE*絵羽・秀吉が無残にも死んでいる。一同が驚愕する。
戦人 :っ……。
譲治 :ふっ…。うわぁぁぁぁ!
うぅっ…うぅっ… 誰がっ 誰がこんなことをっ!
…殺してやる…
殺してやるっ!! 殺してやるっ!!
SE*夏妃が封筒を拾う。
夏妃 :…またお父様の封筒…。
戦人 :っ!?
<個室前>
SE*源次が部屋の鍵をかける。
夏妃 :この部屋は、警察が来るまで施錠したままにしておきます。
いいですね…。
譲治 :っ…っ…。(泣)
真里亞:うー… 臭いよォ。
朱志香:なんだろう、この臭い…。
熊沢 :ちょっと見てきます…。
呂ノ上:嘉音も行きなさい。
1人で行動するのは危ない。
嘉音 :はい。
SE*嘉音と熊沢が見に行く。
<応接間>
SE*譲治はぐったりしている。
朱志香:あんまりだよな…。
1日のうちに、恋人と肉親と次々に殺されるなんてよ…。
戦人 :部屋には鍵だけじゃなく、チェーンがかかってた。
つまり、完璧な密室だったってことだ…。
朱志香:犯人は、部屋に入らないで何かしたんじゃないか?
例えば…。
SE*ドアを開けた絵羽を何者かが刺す。
戦人 :その想像は全然駄目だろ…。
絵羽叔母さんの死体は、ベッドの上にあったんだ。
秀吉叔父さんはバスルーム…。
朱志香:だよな…。
真里亞:うー。
朱志香:っ!?
真里亞:満足…?
戦人 :なにがだよ。
真里亞:きしししし。
戦人は親族の誰かを疑うのが嫌なんでしょ?
犯人はベアトリーチェであってほしいと思ってるんでしょ?
だからベアトリーチェは証拠を見せてくれたんだよ。
戦人 :うぅ。(怒るように)
真里亞:この犯行は人間にはできない…。
自分が犯人だっていう証拠をね…。
きしししし。
SE*戦人が真里亞を殴る。
真里亞:いったい…;
うー!
戦人 :こんなときに笑うんじゃねぇ!
それより、絵羽叔母さんたちの部屋の扉にあった、
怪しげな落書きはなんなんだっ。
真里亞:うー…。
あれは月の1の魔法陣だよ…。
旧約聖書詩篇、107編の16節…。
いかなる方法によって閉ざされた扉でも開けることができる。
きっしししし。
SE*また殴る。
真里亞:いったい…;
戦人 :人が殺されてんだ。
お前が何を知ってようと勝手だが、
回りの人も気持ちも考えろ!
真里亞:うー… ゲンコツ男…。
朱志香:なぁ、真里亞のやつ、変じゃないか…。
いくら魔女が好きだからって、母親が殺されてるのによォ…。
譲治 :…まさか、真里亞ちゃんも犯行に関係してる……とか。
朱志香:真里亞は、ベアトリーチェに会ってるんだぜ…。
ひょっとして、正体を知ってて隠してるんじゃぁ…。
<地下室>
嘉音 :やはりここから臭ってくるみたいだ…。
熊沢 :またボイラーの調子が…。
SE*急に音がする。
熊沢 :ひぇぇ!!Σ
SE*誰かがいる気配。
嘉音 :ボイラー室には、外に通じる出口がある。
急がないと逃げられる!(走)
熊沢 :嘉音さん!
SE*奥へ進む嘉音。
嘉音 :………。
SE*鉈を持つ。
SE*黄金の蝶が嘉音の周りを舞う。
嘉音 :…ルーレットは数字と赤と黒に賭けて配当を競い合う…。
だが、赤黒のようなリスクの低い賭けは、
その程度の配当しか与えられない…。
逆に、的中率の低い賭け方をして的中すれば、
高い配当が与えられる…。
お館様は、
天文学的に低い的中率に賭けて的中することを、
奇跡と呼び…
与えられる配当を… 魔法を呼んでいた…。
お館様とお前が、どんな魔法を求めていたかは知らない…。
でもお前は忘れている…。
ルーレットは赤でも黒でもない、そう…。
0という目があるんだっ!!
僕は1つだけ決めていた…。
もし紗音が殺されて…
僕が生き残るようなことがあったなら…。
この身を投げ出してっ!
お前のルーレットを全て台無しにしてやろうとっ!
僕はもう家具じゃないっ!
お前のルーレットの0なんだっ!
悪魔のルーレットはこれでおしまいだっ!
地獄にてさらに千年、次の召喚者を待てっ!
ベアトリーチェ!!!
SE*嘉音の心臓に杭が刺さる。
嘉音 :うっ……!(倒)
SE*夏妃たちが地下に来る。
夏妃 :あっ…!
戦人 :うっ!Σ
朱志香:嘉音くんっ!
嘉音くんっ嘉音くんっ
しっかりしろよ…。
嘉音 :あっ……。(苦しそうに)
SE*電気がつかない。懐中電灯を持つ戦人。
戦人 :中庭かっ!(走)
夏妃 :戦人くん、1人では危険です。
SE*夏妃もあとを追う。
SE*外に出る戦人。
<屋敷外>
戦人 :はぁはぁはぁ…。
っ………!
逃がしたかっ。
夏妃 :戦人くん…。
戦人 :ちくしょう!!
<地下室>
SE*南條が嘉音の手当てをしている。
SE*電気を修理して付ける呂ノ上。
呂ノ上:これが、嘉音を刺した凶器です。
戦人 :…そして…
これが臭いの元か…。
SE*黒こげになった遺体がある。
戦人 :これがじい様の死体だってのは、
間違いないのか?
夏妃 :足をごらんなさい。
戦人 :…指が6本…!?
呂ノ上:多指症{たししょう}といって、
お館様は生まれつき足の指が6本だったのです。
……っ!?
指に当主の指輪がありません。
戦人 :っ!?
<応接間>
戦人 :……朱志香はどこにいったんだ…。
夏妃 :嘉音の手当てをしています。
本人が、南條先生を手伝いたいというので。
戦人 :…朱志香は、嘉音君のことが好きだったのかな…。
譲治 :…うん…。
戦人 :………。
夏妃 :源次、ボイラー室にも鍵がかけてあったのですね…?
呂ノ上:はい…。階段側の鍵は。
しかし、中庭への出入り口には鍵がありませんので…。
完全な密室とはいえないかと…。
譲治 :…やっぱりこの島には、僕ら以外の19人目がいる…。
そう考えていいのかな…。
戦人 :最初に殺された6人の死体。
あの中に、偽物が混ざってたってことはねぇかな。
譲治 :どういう意味だい…。
戦人 :6人は顔を破壊されていた…。
誰が誰なのかわからないくらいにな…。
もしかしたら、誰かが自分の替え玉の死体を混ぜておいたんじゃァ…。
夏妃 :では6人の中に、実際は生きているものがいると…?
誰がっ。
戦人 :いや、すいません…。
思い付きッスけどね…。
……ん?
SE*項垂れた朱志香を抱えながら南條が入ってくる。
戦人 :南條先生…。
嘉音くんはっ!
朱志香:うっ……うぅっ…… ごほげほっ(泣)
譲治 :犯人はなぜ、屋敷の中を自由自在に動き回れるんだ…。
戦人 :19人目がいるかどうかはともかくとして、
犯人はマスターキーかそれに準ずるものを持ってる…。
そう考えたほうが良さそうだな。
呂ノ上:犯人は、郷田か紗音の鍵を奪ったのかもしれません。
熊沢 :ということは、お屋敷中、
どのお部屋も安心はできないということです。
あぁおそろしやおそろしや…。
呂ノ上:……あァ…安全な場所が、一か所だけあります。
<金蔵の書斎>
譲治 :おじい様の書斎かァ…。
真里亞:うー。多分ベアトリーチェはこの扉を開けられない。
戦人 :どういうことだよっ
SE*真里亞が指をさす。
戦人 :んん?
真里亞:火星の5の魔法陣は強力な魔除け。
戦人たちに昨日あげたお守りと、同じだよ。
SE*中に入る一行。
戦人 :オートロックかぁ。
呂ノ上:このお部屋の鍵は、私がお預かりしているものと、
お館様がお持ちだった2本だけです。
お館様の鍵は、ご遺体から私が…。
朱志香:でも犯人はこの部屋からじい様を連れ出してるんだぜ…。
絶対に安心とか言いきれないだろ…。
夏妃 :他の部屋よりは安全なはず…。
戦人 :ドアには、魔除けのまじないが書かれてるしな。
夏妃 :朱志香、真里亞ちゃんが言っていたお守りとは、
これのことですか。
朱志香:あぁ…。昨日真里亞にもらったんだ。
真里亞:……夏妃叔母さんがそれを…。
夏妃 :えぇ、夕べドアに掛けておきました。
真里亞:それでベアトリーチェは叔母さんに指一本触れられなかったんだね。
夏妃 :っ…。まさか、わたくしの部屋の扉にあった落書きは、ベアトリーチェが…?
戦人 :…手紙?
夏妃 :…まだ開けてませんでしたね…。
南條 :我が名を称えよ…。
どういう意味でしょうな…。
譲治 :これも、ベアトリーチェのメッセージ…
ということになるのかな…。
戦人 :源次さん、魔女かどうかはおいといて、
ベアトリーチェって人間は、実在するんだろう?
呂ノ上:………。
夏妃 :お父様が囲っていた愛人… ですか。
呂ノ上:……ベアトリーチェ様は…
すでに亡くなったと聞いております。
譲治 :…死んだ?
呂ノ上:はい。
それで、
お館様はベアトリーチェ様を蘇らせる方法として、
黒魔術に傾倒{けいとう}なさっていたのです。
戦人 :死人を蘇らせるためっ…!?
南條 :…金蔵さんは、亡くなった奥さんとの、
政略結婚を強制されたと聞いています…。
しかし真実愛情を捧げていたのは、
ベアトリーチェだけだったようですな…。
朱志香:もしかしたらじい様は、
ベアトリーチェが魔女として蘇り、
この館にいると信じたかった… かな。
戦人 :黒魔術の力で、もう一度ベアトリーチェに会おうとしていた…。
譲治 :今の僕には、その気持ちがわかるよ…。
僕も、もう一度紗音を蘇らせることができるなら、
黒魔術でもなんでも、
一生を捧げて研究しようと思うよ…。
朱志香:私も… わかる…。
戦人 :源次さんっ じいさんとベアトリーチェの間に、
隠し子がいた… なんて話しはないんですか。
呂ノ上:…そのようなお話しは、聞いたことがありません。
朱志香:子供っていえばさ、
じい様はなんとかって施設に
莫大{ばくだい}な援助をしてるって聞いたことがあるぜ。
戦人 :施設…?
朱志香:あぁ。身よりがない子供たちのための施設…。
で、そこの子供たちを館に呼び寄せて、黒魔術の実験とか…。
生贄に使ってるなんて噂が…
夏妃 :(すぐに)おやめなさい朱志香!!
お父様を中傷するでまかせに過ぎません。
SE*缶詰を机の上に置く夏妃。
戦人 :生贄…。はっ!
SE*肖像画の前に行く戦人。
戦人 :あァ!! 生贄!
そうだ!
朱志香:どうしたんだよ。
戦人 :碑文だよ! 肖像画の碑文!
SE*戦人・朱志香・譲治・夏妃が碑文を見る。
譲治 :…第一の晩に、鍵の選びし6人を、生贄に捧げよ。
…6人!?
戦人 :第2の晩に、残されし者は寄り添う2人を引き裂け…。
第3の晩に、
残されし者は誉れ{ほまれ}高き我が名を讃え{たたえ}よ…。
第4の晩に頭を抉りて殺せ…。
第5の晩に胸を抉りて殺せ…。
……なにもかも、碑文の通りに進行してるじゃねぇかっ!
朱志香:もし犯人がこれをなぞってるとしたら、
あと3人死ななくちゃならないことになる…!
譲治 :まさか、おじい様は、
生贄の頭数を揃えるために僕たちを呼んだんじゃぁ…。
戦人 :……第9の晩に、魔女は蘇り誰も生き残れはしない…。
…すると、俺たちみんな殺されちまうってことか…。
真里亞:きししししししし。
誰も生き残れなくていいんだよ…。
第10の晩には、
黄金の郷にたどり着くって書いてあるじゃない…。
与えられる宝が、すべての死者を蘇らせ、
失った愛さえも蘇らせるって…。
夏妃 :この筋書きを作ったのはお父様だとしたら、
実行してるのは別の人物です…。
戦人 :だよな…。
なんせ、じい様自身が黒こげにされちまってるんだから…。
真里亞:ほら、ベアトリーチェからきた手紙だよ。
SE*真里亞がテーブルを指差す。
SE*テーブルに手紙が置いてある。
夏妃 :………っ!
南條 :おォ……。(見)
夏妃 :全員下がりなさいっ!!!(構える)
SE*使用人が下がる。
夏妃 :戦人くん、手紙を読んでっ!
戦人 :あ、あァ…。
……金蔵様の碑文の謎を、
お楽しみいただいているでしょうか。
皆様方には、時間が多く残されてはおりません…。
どうか、嵐が過ぎ去れば逃げ出すことができるという、
甘い考えをお捨てください…。
なんだよこれっ!!
夏妃 :戦人くん、つづけて。(構)
戦人 :…このゲームには、私と皆様方の、
どちらが勝つかの結果しかない…。
時間切れは私の勝ちとなる…。
そこをどうか誤解無きよう、お願い申しあげます…。
夏妃 :この手紙を置いたのはっ、あなた方4人の中の誰かですっ!!
熊沢 :奥様、それはあんまりにございます…。
夏妃 :わたくしが缶詰をテーブルに置いたとき、
手紙はありませんでした。
そのあと、
戦人くんと朱志香と譲治くんが肖像画の側へ行き、
わたくしもそれにつづいた…。
手紙がテーブルに置かれたのはそのあと。
だからっ あなた方の誰かが犯人ですっ!!
熊沢 :ひぃっ!
南條 :夏妃さん、どうか落ち着いて…。
夏妃 :誰が手紙を置いたのか、あなた方は見ているはずですっ!
もし誰も知らないというなら、
4人全員がグルになっているということですっ!
戦人 :全員が肖像画を見ている間に、誰かがこっそり入ってきて、
手紙を置いて出て行った…。そういう可能性も…。
夏妃 :扉には鍵が掛かっていたのです!
そんなことはあり得ません!
真里亞:うー… ベアトリーチェは真里亞たちじゃないもんっ…。
ベアトリーチェはいるんだもんっ!
戦人 :真里亞、お前はまたベアトリーチェを見たのかっ。
ベアトリーチェはどうやってこの部屋に入ってきたんだ。
真里亞:きっしししししし。
戦人は魔女なんか信じないんじゃなかったの…?
なのに自分たちの中に、
犯人がいると思いたくない時だけ
ベアトリーチェを信じるの…?
矛盾してるよ…。
戦人 :うっ…。
夏妃 :誰が手紙を置いたのか答えられないなら、
4人全員この部屋から出て行ってもらいます!
戦人 :お、叔母さん…。
夏妃 :答えられないならっ
4人全員が犯人ということになりますよっ!
南條 :わ、わかりました…。
そこまでおっしゃるなら、部屋を出ましょう…。
熊沢 :ほほほほほ。子連れの熊が、
一番恐ろしいと言いますもんね…。
SE*鍵を3つテーブルに置く呂ノ上。
呂ノ上:失礼させていただきます…。
SE*部屋を出る4人。
戦人 :真里亞!
真里亞:きっしし。
心配しなくていいよ。もうすぐ黄金郷の扉が開かれる…。
そして全ての死者が蘇る…。
みんな幸せになるんだよっ。
戦人 :っ……。
夏妃 :早く出ていきなさい!
さもないと、本当に撃ちますよ!
南條 :戦人さん、ここはあまり、
夏妃さんを刺激しない方が良さそうです…。
戦人 :……真里亞、これ持っとけ。(投)
真里亞:…うー? 無くしたんじゃなかったの?
戦人 :…あんときゃ、意地んなって嘘付いたんだよ。
真里亞:ふふ…。
SE*扉が閉まって鍵がかかる。
夏妃 :…これで、安全です…。
譲治 :本当に、これで良かったのかな…。
朱志香:出て行った4人の中に、
犯人じゃない者がいたとしたら、
その人は危険じゃない?
夏妃 :もしそうだとしたら、気の毒なことをしました…。
でも、わたくしはあなたの母親です。
あなたを守るためなら、
わたくしは鬼にも悪魔にもなります。
朱志香:…母さん…。
夏妃 :明日になれば、警察が来て、
犯人を捕まえてくれるでしょう…。
戦人 :そぉっすね…。
明日… うみねこのなく頃には…。
SE*手紙を見る戦人。
戦人 :……。これは…?
SE*専門書を取り出す。
戦人 :あった、こいつだっ。
朱志香:同じもんだな…。
戦人 :火星の3の魔法陣…。
旧約聖書の詩篇、77編13節…。
不和。内部分裂を煽り、敵を自ら瓦解させる…。
朱志香:ちょっと待て!
じゃぁこの手紙は、
私たちを仲違い{なかたがい}させるための罠だったってことかっ。
譲治 :だとしたら… 僕らは敵の手にまんまとハマったことになる…。
SE*電話が鳴る。ジリリリリ。
戦人 :っ!?
譲治 :電話は故障中なのに…。
夏妃 :源次が修理したのかもしれません。
わたくしが出ます。
SE*電話に出る夏妃。
夏妃 :もしもし…。
((真里亞:(さ)…く…ら…に…と…ま…れ…♪
((真里亞:さ…く…ら…の…は…な…の…♪
夏妃 :もしもし!?
歌っているのは誰なのですか!?
((真里亞:は…な…か…ら…は…な…へ…♪
SE*階段を下りて部屋へ向かう4人。
<応接間>
SE*鍵を開ける戦人。
戦人 :……ん? んぁっ!?
SE*呂ノ上・南條・熊沢が顔が砕けて死んでいた。
真里亞:(な)…の…は…に…と…ま…れ…♪
な…の…は…に…あ…い…た…ら…♪
さ…く…ら…に…と…ま…れ…♪
SE*真里亞は電話の前で立っていて歌っていた…。
−ED−
うみねこのなく頃に episode T-W 完