うみねこのなく頃に episode U-T 『middle game』{みどるげーむ}



配役 ♂:5 ♀:11

右代宮 朱志香:女
右代宮 譲治:男
右代宮 蔵臼:男
右代宮 夏妃:女
右代宮 絵羽:女
右代宮 秀吉:男
右代宮 金蔵:男
紗音    :女
嘉音    :男
ベアトリーチェ :女
生徒1:女
生徒2:女
生徒3:女

モブ1:女
モブ2:女
メイド:女


-OP-

〈〈水族館〉〉

SE*紗音と譲治デート

 紗音 :わぁ♪ ほら、譲治様、見てください。
     まるで、海の一部を切り取って、運んできたみたい

 譲治 :紗音は、面白い考え方をするね

 紗音 :たしかに、これは本当の海ではないかもしれません。
     でも、ここに泳ぐ彼らが、海だと信じたなら確かに海なんです。
     そこが、完成された世界だと信じられるなら。
     ……立派な…、ひとつの世界なんです。

 譲治 :……

<<カフェ>>

 譲治 :紗代…

 紗音 :あっ…

 譲治 :紗音っていうのは、使用人としての呼び方だろ?
     僕は君を、本当の名前で呼びたいんだ。
     紗代…

 紗音 :譲治様…

 譲治 :『様』なんてつけないで、君も、普通に呼んでくれないかな?

 紗音 :ぁ・・・はい//
     なんだか…幸せすぎて、怖くなります。

 紗音 :使用人の立場の私が、こんな風に、右代宮家の方とご一緒できるなんて…

 譲治 :思う力にはね、

 紗音 :…

 譲治 :魔法が宿るんだよ。

 紗音 :魔法?

 譲治 :僕は、何年も前から、君のことを知っていた、
     そして、だんだん君を、もっとよく知りたいと思うようになってきた。
     君も多分、同じ気持ちでいてくれたんだと思う。

 紗音 :…//

 譲治 :その気持ちが、魔法を生んだんだよ。
     魔法がきっと、僕たちを近づけてくれたんだ。

 紗音 :そうですね…//
     本当に…魔法だったんだと思います…

<<1985年12月>>

SE*嵐のなか、合羽を着て鏡を取り出す紗音

 紗音M:これを…これを割れば、私は自分の運命を打ち砕くことができる!

SE*鏡を叩きつけて割る

 紗音M:約束は守りました。今度は、あなたが約束を守る番です。

 紗音 :ベアトリーチェ様ぁ!!!

SE*雷1発

<<1984年10月>>

 蔵臼 :譲治くんも、すっかり頼もしくなったなぁ
     今は何をしているんだね?

 譲治 :父の紹介で、人生の先輩方から、いろいろ勉強中です。

 秀吉 :国語算数で満点とれても、会社じゃ役に立たへんからなぁ

 絵羽 :譲治は頑張っているわよー。ねぇ?

 夏妃 :本当に立派ね。朱志香、あなたも少しは譲治くんを見習いなさい?

 朱志香:チェッ…またその話かよ…

 夏妃 :朱志香!

 朱志香:はぁ…あたしちょっと出てくるから。譲治兄さん、後でね。

SE*朱志香、ソファをたち、出ていこうとし、紗音とぶつかる

 紗音 :きゃっ

 朱志香:おっとごめん

 紗音 :…た、只今お茶をおつぎいたします。

SE*お茶を注いでいると、スプーンを落とす

 紗音 :・・・っ!

 夏妃 :何をしているのです!

 紗音 :も、申し訳ありません!

 夏妃 :何年も勤めていながら、お茶も満足に入れられないのですか?

 紗音 :……

 譲治 :いー香りだぁ

 紗音 :ぁ…

 譲治 :これは、アールグレイかな?

 紗音 :え?

 蔵臼 :おぉ?譲治君は紅茶に詳しいのかね?

 譲治 :お世話になっている人で、紅茶に詳しい方がいるんです
     講釈を聞いているうちに、少しだけわかるようになりました。

SE*譲治、紗音にウインク

 蔵臼 :ほ〜

 紗音 :…//

 紗音O:こういう助けられ方をしたのは、

<<庭>>

 紗音 :今回が初めてじゃない気がします。

 朱志香:気配りな人だからな、譲治兄さんは。
     ちょっとキザったらしいけどさ〜

 紗音 :っ、そんなことありません!
     とても…素敵な方だと思います//

 朱志香:ふーーん?

 紗音 :ぁ、そのぉ…

 朱志香:そういや譲治兄さん、前に言ってたなぁ
     自分は家庭的な女の子が好みだって。
     誰かさんはぴったりなタイプじゃないかなぁ?

 紗音 :えぇ?

 譲治 :やぁ!何の話?

 紗音 :きゃぁっ

 朱志香:紗音が、譲治兄さんに言いたいことがあるらしいぜぇ?

 譲治 :僕に?

 紗音 :は…はいっ…
     あの…先程は、お気遣いをありがとうございました

 譲治 :なんのことだい?

 紗音 :…

 譲治 :お礼を言われるような覚えはないけど

 朱志香:な?こういうとこ、キザったらしいだろ

 紗音 :そ、そんなことはありません…

 朱志香:だってさ!よかったな、譲治兄さんっ☆

 譲治 :…//

 朱志香:あっ、照れてる照れてる♪

 譲治 :いやぁ…別に//

 朱志香:あはははははは

SE*その光景をみる絵羽

 絵羽 :譲治。
     お祖父様にあなたの話をするわ。
     いらっしゃい。

 紗音 :え、絵羽様、失礼しました。

 朱志香:話?

 譲治 :あぁ、いや、大したことじゃ…

 絵羽 :譲治にお見合いの話が来てるの

 紗音 :…!

 絵羽 :この子もお年頃でしょ?そろそろ、ふさわしい相手を見つけなくちゃねぇ

 朱志香:見合い!?

 譲治 :あ…か…かぁさん…僕にはそんな話まだ早い

 絵羽 :それに、相手の方は、家柄も学歴もとってもしっかりした人だって言うじゃなぁい?

 譲治 :……

SE*紗音に近寄る絵羽

 絵羽 :だからねぇ…
     低学歴で無能で無教養な使用人風情{ふぜい}が出る幕じゃないの
     身の程を弁え{わきまえ}なさい!

 紗音 :…

<<絵画前>>

 紗音 :ベアトリーチェ様…
     私は確かに無教養な使用人です。人ですらない。
     このお屋敷の家具です…。
     でも…だったらどうして、恋をする心などを与えられたのでしょうか?
     こんなに苦しくて、つらい思いをするのなら
     …心なんてっ、いらないのに…(泣)

SE*黄金の蝶が舞う

 ベアト:んっふふふふふふ。

 紗音 :・・・っ

 ベアト:世界を構成する元素について、人間は紀元前の昔から探求を続けてきた。
     そしてあるとき、星の導きで現れたひとりの男が、
     ついに世界を構成する一なる元素をセツヨウした。

 紗音 :はっ…

SE*ベアトリーチェ登場

 ベアト:何かわかるか?

 紗音 :…

 ベアト:んっふふふ。

 紗音 :ベアトリーチェ様

 ベアト:いかにも、妾{わらわ}がベアトリーチェである。
     そなたの悩み…それは愛ゆえよ…
     それこそがつまり、この世界の一なる元素。
     この世の全てだ。
     それが満たされないということは、世界が満たされぬと同じこと。
     知識の実を口にしたアダムとイブが知ったのは、愛だったのだ。
     それ故に、人は楽園を追われ、人たりえた。
     そなたは今、愛を知り、人となった。そう、今こそ人間となったのだ。
     妾のチカラで、そなたの願望を叶えてやっても良いぞ。

 紗音 :…

 ベアト:そなたを想い人と添い遂げさせてやっても良いと言っているのだ。

 紗音 :…

 ベアト:その代わり、ひとつ頼みがある。

 紗音 :…

 ベアト:この島の近くの岩礁{がんしょう}に、鳥居と祠{ほこら}が設けてある。
     その祠の中にある鏡を割って欲しいのだ。

 紗音 :鏡…?

 ベアト:正直な話、あれにはまいっておる。
     鏡を割ってくれれば、妾は力を取り戻すことができるのだ。

 紗音 :お断りします。

 ベアト:ほぉぅ?理由があれば聞こう。

 紗音 :理由なんて…
     ただ、今日までこの島は平和で、何も起こりませんでした。
     なら、鏡を割らなくても、今日までと同じ平和がこれからも続いていくはずです。
     でも、魔女のあなたが力を取り戻したら、何が起きるか。

 ベアト:なるほど。そなたの言うとおりだな。
     鏡を割らねば、今日までと同じ日々が続こうぞ。……永遠にな。

 紗音 :…

 ベアト:もし気が変わったら、我が名を呼びながら鏡を割るが良い{よい}。
     妾は必ず、約束を守るだろう。

 嘉音 :やめろ!紗音をいじめるな!

 紗音 :嘉音くん!

 ベアト:言葉を選ばぬクズめ。

 嘉音 :お前は…まさか!

 ベアト:妾は敬う者に対しては寛大だが、そうでないものには”残酷”であるぞ

 嘉音 :…ッ

 紗音 :おやめください!ベアトリーチェ様!
     嘉音くんは、まだ子供なんです!

 ベアト:そなたが求めるなら、特別に許そう。優しい娘よ。
     妾は、そなたが気に入っておるのでなぁ

SE*ベアトが指パッチンすると。紗音の体が勝手に動く

 紗音 :わっ・・・はっ・・・

 ベアト:別れの挨拶に、土産を残していこう。

SE*黄金の蝶がまい、紗音の手に乗り、形を変える

 紗音 :…。これは…?

 ベアト:それを持っていれば、そなたの願いは成就するであろう。
     しかし、鏡を割らぬ限りは、ただの装飾品に過ぎぬがな

 紗音 :…

 ベアト:ゆっくり考えるがよい。己{おのれ}の未来をどうするのか?
     今までと同じ毎日を求めるのか、変化を求めるのか。
     決めるのはそなた自身。

SE*ベアトリーチェ消える

 ベアト:んっふふふふふ あははははははははは!

 嘉音 :…ッ

 紗音 :ぁ…

<<1986年8月>>

 朱志香:はぁ!?
     わざわざ沖縄まで行ってきて、『ちゅー』も『ぎゅー』も、してねぇのかよ!?

 紗音 :でも、私はとっても楽しかったです//

 朱志香:あ・・ぁぁ・・・ むーーー!あたしも彼氏欲しい!紗音に先越されたー!
     くやしー!わぁー! うっ…げほっげほっ…

 紗音 :お嬢様っ

 朱志香:ぇほぇほっ すはぁすはぁっ はぁ…はぁ… はぁ…はぁ
     わるい。

 紗音 :いえ

 朱志香:紗音…

 紗音 :…?

 朱志香:正直に言って…。あたし…髪型とか、変…かなぁ…
     目とか鼻とか、やっぱり…喋り方…がダメなのかな…

 紗音 :お嬢様は、そのままで十分に素敵です。

 朱志香:…

 紗音 :お嬢様。好きな人が…いるんですね?

 朱志香:…。(頷く)

<<ビーチ>>

 ベアト:旅行の土産か

 紗音 :はい、お口に合うといいのですが…

 ベアト:ふむふむ(食べている) ふぅむ、悪くない♪ …?

 紗音 :…♪

 ベアト:何をニヤニヤしておる?

 紗音 :あっ…いえ。
     魔女である、ベアトリーチェ様が、そうしてお菓子を頬張っておられるのが
     なんだか不思議な感じで。

 ベアト:…心外だ。

 紗音 :うふっ あ、そうだ。 これを。

 ベアト:返さずともよい。

 紗音 :え?

 ベアト:それを持ち続ければ、二人の中は磐石{ばんじゃく}であろう。

 紗音 :…
     私と譲治様が、親しくなるきっかけは、確かに、魔法で与えてもらったかもしれません。
     でも、それを永遠のものにする努力は、二人だけのチカラで、やるべきだと思うんです。

 ベアト:気にせず持っておけ。妾との友情の証と思って大事にしてくれれば、少しは気も慰む{なぐさむ}。

 紗音 :…友情?

 ベアト:妾に頼るものは多いが、願いが叶ったあとまで、
     感謝の気持ちを持ち続けてくれるものは少ないでな。

 紗音 :…

 ベアト:この島で、妾の姿を見ることができるのは、そなたと嘉音の二人だけだ。

 紗音 :でも、お館様は、昔、ベアトリーチェ様を呼び出して、黄金を授けられたと。

 ベアト:才能もないくせに、必死に妾を呼び出そうとしていたのだ。
     それでつい、からかいたくなったのが運のつきよ。
     この島に、何十年も縫い止められる羽目になった。

 紗音 :私が割った、あの鏡のためにですか?

 ベアト:それも理由の一つだ。
     大昔、悪い歪みを、旅の東洋魔術師か何かが、社で封じ込めたらしい。
     それが、あの鏡だ。おかげで未だに力が戻らず、希薄な存在だ。

 ベアト:雲が出てきたな。海も精彩{せいさい}を欠けば、灰色の水溜りに過ぎぬ。

 紗音 :そうでしょうか?

 ベアト:うん?

 紗音 :曇っていても、私には、海は美しく、真っ青に思えます。

 ベアト:それこそが、家具から人間になった証だ。

 紗音 :……

<<夜のビーチ>>

 嘉音 :これは、あいつの。

 紗音 :んーん、私の。だから、私だと思って持っていて。

 嘉音 :あの魔女のブローチなんか欲しくないよ!
     なんで姉さんはあんな魔女にたぶらかされてるんだ!

 紗音 :みて。あの海。

 嘉音 :…

 紗音 :何色に見える?

 嘉音 :真っ黒だよ。

 紗音 :私には、青く見える。
     私にはわかって、嘉音くんにはわからないなら、つまり、そういうことなの。

 嘉音 :…

 紗音 :嘉音くん

 嘉音 :…?

 紗音 :朱志香様の事なんだけど…

 嘉音 :…っ?

<<朱志香の学校>>

SE*文化祭

 モブ1:どうぞー

 モブ2:いかがですかー

 モブ1:いらっしゃいませー

 モブ2:おいしいですよー

 モブ1:お一ついかが?

SE*生徒たちが呼び込みをしている

SE*朱志香は教室で友達と待機中

((生徒1:ねぇ、いつくんの〜?

((朱志香:だからもうすぐ来るってぇ…

 メイド:おかえりなさいませ!

((友達:あはは

 朱志香:あ、嘉音くん!

 嘉音 :…

 朱志香:よく来てくれたな!待ってたぜ!

 嘉音 :遅くなって、申し訳ございません。

 朱志香:いやいや…あははは…

 生徒2:あれ、じぇしの彼氏?かっわいー♪

 生徒3:付き合ってる子がいるってマジだったのね♪

 生徒1:年下?年下なんて聞いてないよっ♪じぇしってショタ趣味だったの?♪

 嘉音 :ショタ?…僕のことでしょうか、お嬢様?

 生徒2:やーっ、うそぉっ、僕っこだぁ♡

 生徒3:お嬢様って呼んでるー♡

 生徒1:何っ♡調教済み!?♡

SE*朱志香の友達はきゃーきゃー言っている

 朱志香:… 嘉音くん、ちょっと待ってて?

SE*朱志香、戦闘準備し、嘉音を教室の外に
   友達をめためたに殴る

 生徒1:ぎゃっ

 生徒2:うおっ

 生徒3:うあわあ

SE*朱志香、廊下に出てくる

 朱志香:わーるい、悪い♪
     つか、ごめんな。彼氏のフリなんかさせちゃって

 嘉音 :いえ

 朱志香:私生徒会長だし、色々忙しいんだけどさ、
     できるだけ時間作るから、今日は楽しんでいってくれよ!

 嘉音 :…

<<文化祭/夕/ステージ>>

SE*朱志香と友達たちが、どっきゅん☆ハートを歌っている

 朱志香:後生だ 後生だ こんにちは〜!

     どっきゅん☆どっきゅん☆この胸が
     どっきゅん☆どっきゅん☆裂けそう
     どっきゅん☆どっきゅん☆心の
     消しゴムクダサイ!(イェイイェイイェイ!!)

     どっきゅん☆どっきゅん☆弾けてる
     はっきゅん☆もっきゅん☆バレちゃう!?
     どっきゅん☆どっきゅん☆真実は


((嘉音M:なんだこれは…?バカみたいじゃないか…人ごみは嫌いだ…息苦しいし、気持ち悪い…
     僕はこんなところで何をしてるんだ…?

 朱志香:内緒さ!

     どっきゅん☆どっきゅん☆ぎゅるるんっと
     どっきゅん☆どっきゅん☆クールに
     どっきゅん☆どっきゅん☆キメなきゃ
     祟りがキちゃうよ!?(ヒャ-!!)

     どっきゅん☆ばっきゅん☆ニパニパっと
     ほっきゅん☆もっきゅん☆あぅあぅ
     どっきゅん☆どっきゅん☆サラリとね
     いきませんか?

     Come on now

     にゃかにゃん♪にゃかにゃん♪にゃかにゃん♪にゃん♪
     にゃかにゃん♪にゃかにゃん♪にゃかにゃんにゃっ

     チュ,チュ,チュ,チューリラッタッタ♪
     チュ,チュ,チュ,チューリラッパッパ♪
     チュ,チュ,チュ,チューリラッタッタ♪

     嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!

((嘉音M:……お屋敷にいる時とは違う…

 
 朱志香:チュ,チュ,チュ,チューリラッタッタ♪
     チュ,チュ,チュ,チューリラッパッパ♪
     チュ,チュ,チュ,チューリラッタッタ♪

     ↑↑↓↓←→BA{うえうえしたしたひだりみぎびーえー}

     チュ,チュ,チュ,チューリラッタッタ♪
     チュ,チュ,チュ,チューリラッパッパ♪
     チュ,チュ,チュ,チューリラッタッタ♪

     千年 万年 風神 雷神

     チュ,チュ,チュ  ((フェードアウト


<<庭園>>

 朱志香:はぁー、今日はたのしかったぁ♪

 嘉音 :お嬢様

 朱志香:ん?

 嘉音 :お歌、お上手でした

 朱志香:ふぇっ…あっ…あっはは、照れるぜ(*´д`*)

 嘉音 :僕には歌は歌えません
     …僕は、家具ですから

 朱志香:…あ、その自分は家具だって口癖、よそうぜ?
     私たちは、同じ、人間じゃないかよ♪

 嘉音 :…

 朱志香:私だって、この島の暮らしが居心地いいわけじゃない。
     右代宮家の跡取りなんて、しんどいだけさ。
     でも…だからこそ、右代宮家のお嬢様をやらなきゃいけない自分とは別に、
     自分の好きなことに精一杯な、もうひとりの自分を作った。

 嘉音 :… もうひとりの…自分?

 朱志香:人はさ、自分の中に、自分が本当に好きになれる自分を、
     いつでも作り出すことができるんだよ。

 朱志香:嘉音くんも同じだと思う。
     嘉音って名前も、本名じゃないんだろ?

 嘉音 :本当の名前は忘れました。家具にとってはどうでもよいことです。

 朱志香:だからその言い方よせって

 嘉音 :もうひとりの自分…
     そんな可能性を抱ける{いだける}のは、お嬢様が人間だからです。

 朱志香:…

 嘉音 :僕はそうじゃない。
     未来も、可能性も、見るべき夢もない。

 朱志香:なんで、そんな…

 嘉音 :紗音に聞きました
     お嬢様が、僕のことを気に入っておられるとか

 朱志香:えっ…あ、いや/// あははは///

 嘉音 :人間と家具は恋愛などできません。

 朱志香:…ッ

 嘉音 :紗音と譲治様も、必ず破綻します。

 朱志香:そんなこと…ッ

 嘉音 :家具の僕には、誰も愛することができないのです

 朱志香:…ッ

 嘉音 :僕を人間と思ってくれて、ありがとうございます。
     そのお気持ちだけで、十分です。
     失礼します。

 朱志香:……

SE*背中を向け、歩いていく嘉音

 ベアト:あっははははははははは
     妾の魔法で、もうひと組の恋人たちが生まれると思っていたのだが、残念だなぁ

 嘉音 :今、わかった
     お前は恋のキューピッドなんかじゃない!
     結ばれるあてのない者たちに、無駄な希望をもたせて!弄んでいるだけだ!

 ベアト:んっふふふふふふ

 嘉音 :消え失せろ、魔女め!

 ベアト:我が魔力も何れ{いづれ}満ち、妾は必ず蘇る{よみがえる}。
     そしてこの島の、誠の主として、すべてを支配する。

 嘉音 :…ッ

 ベアト:そしてその時こそ、再び黄金郷の扉が開かれるのだ!
     あっはははははははは、あーっははははははははは

SE*ベアトリーチェ消える

<<絵画前>>

 金蔵 :ベアトリーチェ!
     これほどまでに、恋焦がれているのに、なぜ?!
     なぜ答えようとせぬ?!あーぁぁ・・・

 


 ベアトO:恋に狂い、黄金に狂う。そのどちらにも狂わぬものなど、人間にあらず。
     撒きたる恋の種は3つ。どのように実るか、楽しみでならない。
     熟しすぎて腐り落ちる果実の液に、黄金の蝶たちは舞い降りる。
     今より収穫の日が待ち遠しい。宴の時はまだか?
     っふふふふふふふふ あっはっはっはははは!

-ED-

次回予告


うみねこのなく頃に episodeU−T 完


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